カナダ外資系日記

海外就職、海外で働く、株式投資について書きます。

オイル事業のBreak Even Price

今日はオイル資産のBreak Even Priceについて書きたいと思います。新聞記事を読むと、この言葉の意味を記者さんもきちんと理解して使っていないと思える記事を多数見かけるので、ここで整理したいと思います。

 

Break Even Priceというと、この価格より下がったら利益が出ないギリギリの価格という意味で使いますが、Break Even Priceといっても実は色々なものがあるのです。

 

まず1つ目の使い方としては、オイル上流事業(Exploration & Development, E&P)はリスクが高いため株主の期待利益は一般的にIRRで15-20%と言われています。この価格であれば15%の投資利益を出せるギリギリの価格、これをBreak Even Priceと言うことがあります。次に、この15%の利益を含まない、投資をしたらIRRが0%となる価格もBreak Even Priceとも呼びます。

 

上記2つが、新規投資に関するBreak Even Priceに対し、3つ目以降は、投資では利益は出ないけど、既存の生産は維持できるBreak Even Priceです。例えば、既存の生産でFree Cash Flowがプラスになる価格、もしくは、既存の生産でEBTIDAがギリギリプラスになる価格、もしくは、既存の生産でCOI (Cash Operating Income、=Revenue-Royalty-Opex-Transportation cost)がギリギリとなる価格、そして最後に、Contribution Margin (=Revenue-Roaylty - Variable Cost)がギリギリとなる価格など。このContribution Margineというのは、Fixed Cost分赤字になるけど、生産を止めるよりFixed Costが減らせるため生産を止めるよりはマシという意味で、生産停止の判断の時に使います。

 

上記のように、Break Even Priceと言っても、投資に関するBreak Even Priceなのか、既存生産に関するものなのか、そして上記のどの利益レベルの話なのかをきちんと明確にしないと、話がごちゃごちゃになります。また、これらのBreak Even Priceは、国によって、そして同じ国でもどのRock からオイルを生産するかで大きく異なります。例えば、サウジのBreak Even Priceは一般的にカナダよりは圧倒的に安いですし、同じカナダでもオイルサンドのコストは在来型のオイルよりも大幅に高い。

 

従って、米国Tight Oil (シェールオイル)のBreak Even PriceはWTI US$50/bblと言っているのは、新規投資をする時にIRR 15%確保できるラインを言っています。勿論この価格では既存の生産事業は大幅な黒字になります。上記の生産を停止するかどうかを判断するContribution MarginであればおそらくUS$10-15/bbl 位でしょう。従って、先週までのWTI US$20/bblからUS$30/bblであれば、新規投資はしないけど、既存の生産は継続するという判断でしたが、昨日のWTIマイナスそして本日のWTI数ドルということであれば、当然Contribution Marginもネガティブですから、生産停止を考えるということになります。ただし、一旦生産を停止すると停止するため、そして再開するためのコストがかかるので、利益のネガティブ度合い、この超低価格がどの位続くのか、そしてジュニア系の会社であれば、銀行の契約で遵守すべきDebt/EBITDA Multipleがどれほど悪化するかなどを勘案して決めることになります。勿論、生産停止残すとは、オイルが生産できるRockの種類によって異なります。

 

クリアカットにいかなく、かなりややこしいのです。従って、本当はBreak Even Priceについて話すときには、どのレベルのPriceを言っているのかをきちんと明確にする必要があるのです。次にオイル関連の記事を読む時、上記を気をつけて読んでください。