カナダ外資系日記

海外就職、海外で働く、株式投資について書きます。

カナダオイル会社で働いてわかった、外資と日本企業との働き方の違い

カナダのオイル会社で働き始めて8年以上が過ぎました。今日は外資と日本企業との働き方の違い、そして何故その働き方の違いが生まれるのかということを考えてみたいと思います。私はこれまで、日本にある日系企業、日本にある外資戦略コンサル、在カナダの日系企業、在カナダのオイル会社という、日系、外資という視点では全てを経験しています(この分類、MECEです・笑)。その実際の体験から纏めたいと思います。

 

これは日本企業を批判するために書いたのでは有りません、逆に日本の会社の伸びしろを信じているのでこれを書いています。まあ、一つの視点として読んでもらえれば幸甚です。

 

結論から先に言えば、外資は効率的な利益追求の為だけに働く、日本企業は日本人の信じる道徳観・価値観に縛られた経営が行われている事が最大の違いです。

 

  1. 雇用制度:外資の雇用は今後1年の投資予定金額で決まります。今後10年ではありません、1年です。3年後に投資が増えるからそれまで人を雇っておこうなんて贅沢は許されないのです。例えば現在の世界のオイル価格は低迷しているので、来年の投資金額は全盛期の半分です。従ってオイル会社では現在レイオフが盛んに行われています。但し、今後景気が上向き投資が増える見通しが立てば一気に雇用を増やします。日本企業は基本終身雇用ですから、投資と連動してないですよね。つまり、利益追求のために必要なことを経営者が怠っているということです。日本企業がレイオフを出来ないというのは、法律的に出来ないということではなく、従業員の生活保証など、日本人の信じる道徳観、価値観に縛られているからです。但し、経営としては効率的ではありません。これを書くと、従業員の会社へのロイアルティという人がいますが、日本のサラリーマンの会社へのロイアルティって、本当に高いと言えますか?
  2. 仕事の効率性:私の今いる外資オイル会社では、仕事を如何に少ない人数で少ない時間で最大の効果を発揮できるのかを常に追求しています。その手っ取り早い方法がソフトウェアの導入です。現在私の仕事は今後10年の投資計画と収支計画作成の仕事をしてますが、資産ポートフォリオ及び終始計画作成には夫々ソフトウェアを使っており、エクセルの世界とは違う次元で仕事をしています。また、無駄な仕事はするべきではないという価値観が社内で統一されているので、議事録、無駄な書類作成、報告書作成、メールの書き直しなどという利益を上げない仕事は誰も行わないし、無駄な仕事をする人は非効率的な人というシールをハラれレイオフ対象です。一方、日本の会社はどうですか?未だにエクセルやパワポ中心、議事録・報告書作成、メールの会社の尊厳を損なわない格式ある書き方など、利益追求とは言えない無駄な仕事が多いですよね。これは、大企業としての品格を守る、仕事はこうあるべきという、利益追求とは繋がらない大企業病の典型と言える仕事を沢山していませんか。
  3. 個人の職業感の相違:カナダ人、そして欧米人は仕事をお金を稼ぐ手段として捉えています。勿論そこから生まれるプライドというものもありますが、基本はビジネスはビジネスとして捉え、自分の家族を幸せにする手段と割り切っています。割り切っているからと言っていい加減ということでは決して有りません。一方日本企業の会社員はどうでしょうか?お金を貰うという意味だけでなく、自己実現、自己の成長、プライド、社会での自分だけでなく家族のステータスを決める場ですよね。つまり、自分のステータスはその本人ではなく会社名が形作るという特殊な職業感を持っています。〇〇さんではなく、〇〇会社の〇〇さん。大学名も同様ですよね、何を学んだではなく、〇〇大学出身の〇〇さん。全て組織名あっての自分です。従って、必ずしも利益追求とは言えない無駄な仕事が増えていきます。
  4. 働き方の違い:上記職業感の相違は働き方に大きな影響を及ぼします。カナダ人は仕事は家族を幸せにする手段ですから、如何に効率的に給料を稼げるかを追求します。従って、無駄な仕事をするなら早く帰りたい、短い時間でより多くの成果を出して沢山給料を貰いたい、沢山給料を貰いたいから資格取得など自己成長のための勉強にもとても熱心。今どき学位取得で満足する人はカナダの大企業では殆どいません。また、レイオフされたくないので自己のパフォーマンス追求には余念が有りません。つまり、最短で最大の効果を出すため、仕事は合理性の追求となります。一方日本はどうでしょう。会社は自分のステータスを写す鏡ですから、立派なメールを打つ、きれいな報告書を作る、残業アピールによってあいつは頑張ってるという利益とは関係ない事が多々起こる、残業したら評価されるから無駄な仕事を削除するという視点が夫々のオペレーションで欠落していませんか。頑張るって手段であって目的じゃない、手段と目的を入れ違えてるのが日本企業の問題点。長時間労働は仮に頑張っている証だとしても、殆どの場合が思考停止に陥っている。また、レイオフが無いから皆さんのんびり。長時間労働だからといって本当の意味で必死とは言えません。
  5. 最後に:カナダのオイル会社で思うこと、当たり前のことが当たり前のように行われている。皆んな残業なんかしたくない、でも沢山給料貰いたい、だから自分をより効率的で効果的な武器に磨き上げるために勉強はする、無駄なことはしたくない、短時間で効果を出したい、当たり前のことです。でも日本の会社はどうですか?当たり前のことが当たり前に動かない。誰もがわかっているのに無駄な残業だらけ、皆んな家族があれば早く帰るべきなのに早く帰れない、終いには政府主導で働き方改革なんて叫んでしまう。何で自分の会社を効率的なオペレーションに変えるのに一番非効率的な政府なんかに指示を仰がないと何も始まらないのか。カナダでこんな事が起これば皆お腹を抱えて笑ってしまいます、政府、お前が言うかと。当たり前のことが当たり前に回らないお上依存の日本の会社。

とても一つのブログ記事で纏められるようなものではないのですが、上記思いつくままに纏めてみました。出来ればこれを批判と取るのではなく、日本企業が少しでもよくなるヒントと捉えてもらえればと思い書きました。こういう事を言うと、欧米と日本は違う、欧米のようにすれば良いわけではないなんて批判を予測できますが、そもそも日本vs欧米なんて図式、おかしくないですか。なんで日本は欧米と張り合わないといけないのか、Japan as NO1の時代ならわかりますが、今や日本はGDP per capita で24番目の国です。張り合えるわけがない。日本人はとても優秀でモラルが高い事は間違いない、問題は経営システムの問題です。日本企業が無駄を排除しもっともっと効率的になり、それこそJapan as No1に復活することを願っています。