カナダ外資系日記

海外就職、海外で働く、株式投資について書きます。

外資で働く苦悩

昨日は、外資が如何に効率性を追求した経営が行われているかを書きました。ビジネスが合理性の追求とするなら、外資の経営スタイルは優れた経営と言えると思いますし、合理性を追求しきれない日本企業は一部企業を除いて世界市場で競争力を失っている。

 

それでは、外資企業で働く社員は幸せなのかという、社員視点で考えると、これはとても難しい問題だと思います。翌年の投資が半分になれば、大量のレイオフが起こる、投資が倍になれば雇用は急増し給料も増える。つまり、外資では人は固定費ではなく比例費なのです。全体としては、効率的な経営スタイルは長期的なキャッシュフローを最大化するはずですから、外資社員の給料は相対的に高い。しかし、二人の子供を持つ私の例で言えば、オイル価格が半分になろうと、私の会社の投資額が半分になろうと、私の家族が食べる量を半分にしたり倍にしたりは出来ません、子供の習い事を急に止めさせたり倍にしたりは出来ません。家庭運営には安定したキャッシュフローが必要です。更に、レイオフの恐怖、そこから起こる家庭不和、家庭内暴力など、精神的にも安定せず、朗らかでおおらかな家庭運営はとても難しい。経済と家庭運営のサイクルの違いやギャップ、これは大きな社会問題となります。私の会社で大量のレイオフが行われたとき、株主利益を最大化するのに、ここまで沢山の家族を奈落の底に突き落とすことが許されるのかと思ったものです。

 

では、投資家としての視点ではどうでしょうか。カナダでは日本の国民年金のように世代間で年金を移動させる制度ではなく、自分の年金は自分で積立て、基本給の18%までは年金として積立てることが出来、税制上の優遇があります。そしてこのお金をそれぞれのRisk Profileに基づき、株式、ボンド、為替など色々な形て運用しています。株式運用ゼロというカナダ人は年配の方を除き少数です。つまり、どこかで働いている会社員という立場と同時に、株主でもあるわけです。株主としての立場では会社に効率的な運営を求めますので、一切の無駄は省きたいのでレイオフが行われば株価は上がり、個人の年金資産も増えます。従って、株主としての視点ではレイオフはGood Newsとなるわけです。

 

もう一つの視点は、貧富の格差の拡大です。私がここで述べるまでもなく、カナダのように資本主義を本当の意味で追求する社会では、貧富の格差は拡大します。お金持ちは株式投資で累乗で富が拡大し、一方でお金がなく教育のないものはその労働力を安く買い叩かれます。最近ではホワイトカラーでも同様のことが起きています。

 

それでは、カナディアンはどのようにこれを捉えているのか。現制度でよいのか、一度立ち止まって日本のように終身雇用だけで低成長の社会に戻るべきなのか。この話題を会社のランチクラブでディスカッションしたことがあるのですが、結論としては、カナダ米国のような北米資本主義のやり方がベストとは思えないが、これ以上にベターなやり方は思いつかないというものでした。逆に日本のような終身雇用制度、競争原理が働きづらい制度では会社の競争力を失い、一時的には安定するものの、長期的には国自体の競争力も失い国民は破綻するという意見です。彼らと話していると、覚悟が違います。人材が比例費として扱われる、景気が悪ければレイオフという図式はここカナダでは今始まったわけではなく、今の若い世代の祖父世代から既に経験しています。俺の祖父は石炭の炭鉱労働者だったが、レイオフされた、俺の親父もオイル会社でレイオフされたなど、ある意味人生とは安定したものではなく、アップダウンを繰り返す厳しいものだという覚悟があります。私は日本生まれの日本育ちで、親は大企業のサラリーマン、安定が当たり前と信じて疑わない環境で育ったので、この覚悟には驚いたと同時に、彼ら彼女たちの強さを私は感じます。

 

まあ、この話に答えなんてありません。皆さんはどうお考えでしょうか。