カナダ外資系日記

海外就職、海外で働く、株式投資について書きます。

経営の透明性

今日は経営の透明性について書きたいと思います。自宅勤務が始まり一ヶ月半は経ちましたでしょうか。今日は月に一回のCEOから全社員への現状説明及びQ&Aを行う会議がSkype Businessを通して行われました。

 

COVID-19の社内での感染者の状況、オイル需給、今後2年の予算が主な議題でした。このカナダのオイル会社で働いて10年近くなるのですが、いつも感心するのが経営の透明性です。良いことも悪いことも、勿論ある程度の制限がありますが、経営陣は常に株主や社員にそして社会にありのままを伝えようと努力しています。

 

皆さんご存知のようにオイル価格の急落でオイル会社は巨額の赤字を計上しています。2014年のオイル価格の急落はOPECでの合意ができず、供給側の問題でした。しかし、このCovid-19の問題は、恐らくオイル業界始まって以来始めて起こる、供給、需要、在庫キャパという三重苦です。私の会社でも第1四半期の決算だけで1500億円近くの赤字を計上しています。これは会計上の赤字なので、キャッシュベースではこれほどの赤字ではありませんが。このまま行くと、Investment Gradeは維持できるのか、今後のオイルの需給問題、カナダのオイル業界予測、当社の戦略、予算計画、人員削減など、包み隠さず話をしていきます。社員も赤字なのにレイオフが無いという虫の良い話は無いことは十分承知しているのでそれをきちんと受け入れます。

 

私はこの透明さがとても好きです。事実はなんとなくわかっているのにそれを明確に聞けなかったり今後の動向を無闇に想像するのではなく、事実は事実として捉え、それに正面から向き合う姿勢は、一時的には自分自身も含めて大きな痛みを伴うこともありえますが、結果的には効率的効果的に問題を解決できる近道だからです。まあ、好き嫌いはおいておいて、これは欧米社会のとても大事にしているValueだと私は思います。

 

一方、日本のCovid-19の対応を見ていると、首相から、現状分析、どのようなシミュレーションが考えられるのか、今後どのように日本は対応するのかなどの説明が欠けているように外からは見えます。また、日本の方で、海外から日本が批判されて腹立たしいという意見をよく見ますが、それは少し誤解があるかもしれません。日本を批判している報道は、カナダでは私は目にしていません。但し、日本は余り信頼できないのです。日本は検査を余り行っていないことはここカナダでもよく知られており、透明性にかける、もしくは日本は数字を隠蔽しようとしているのではないかとの疑いはされています。これは欧米社会からすると、批判するものではないものの、信用できるパートナーとしては見なされないものです。今回のCOVID-19では、カナダは比較的遅く波が襲ってきたので、韓国、イタリア、フランスなどの感染者推移や医療破綻などの統計資料を用いてシミュレーションをかけますが、残念ながら日本を参照するデータは私は殆ど見ません。それは統計データとしての信頼性が低いからです。この意味では、残念ながら中国が事実を歪曲しているのではないかという味方と根底は一緒です。この透明性の欠如が問題なのです。日本がきちんと検査を行い、そのデーターを国際社会に公開することは日本が果たすべき役割の一つだと思います。

 

今回のCEOと社員との会議に戻りますが、カナダのエネルギー大臣から当社のCEOに直接電話があったそうです。政府としてオイル業界にどんな支援が出来るかという内容だったようです。それに対し、当社はこう答えたそうです。何が出来るかも大事だが、何をしないかも大事であり、政府がマーケットに介入することは短期的には救われるが長期的成長を阻害するのでこれはやめるべきだと話したそうです。これぞオイルマン、私はこのような会社に必要な戦力と認められていることに誇りに思いますし、カナダのオイル業界を気に入っています。