カナダ外資系日記

海外就職、海外で働く、株式投資について書きます。

北米の会社の働き方

長文です。面倒な方は読まないでください。でも、日本語ではなかなか読めない記事ですよ。

 

日本では働き方改革を国が中心となって進めているようですが、これを進めている人たち、進められている人たち、日本の会社や組織以外の働き方って知らないですよね。欧米をベンチマークにしようとしても、欧米の会社で働いた人って殆ど日本にはいないわけですから、きっと欧米ではこうしているはずって想像しながらそれを真似しようとしているわけです。従って、昨日は事実ですが皆さんには辛辣なことを言いましたので、今回は北米の会社での働き方について私の実体験から教えてあげましょう。私は東京で外資コンサルというところで働いていて、その給料もステイタスも全て捨ててリスクを取って、イギリスでMBAを取得してカナダのオイル会社からオファーをもらい、そこで10年働いて得たことをシェアします。そうです、有難たく聞いてください。では、簡単に箇条書きで思いつくままに。

  • 北米の会社は、株主価値の最大化、これのみを目的に経営されています。お客様は神様、従業員あっての会社、取引先に支えられて成り立っている、などなど、こんな言葉も発想もありません。たった一つの経営目標は株主価値の最大化。ここにブレや迷いは一切ありません。
  • 株主価値の最大化のために、優秀な人材を取りたい、顧客を喜ばせることにより販売価格を上げたいということはありますが、顧客満足度、従業員、取引先、社会というのはあくまで目標達成のための手段であってこれらが目的となることはありません。従って、多額の利益を計上してもコスト削減の余地があればレイオフはしますし、日本の会社にように何期も連続の赤字を計上して最後の手段としてレイオフをするということはありません。レイオフは最後でなく最初の手段です。
  • では、北米の人で従業員として働くことは、会社に搾取されるかというとそうではありません。北米の人には、日本人の様に上にへつらったり、自分の権利を犠牲にしたりというような卑屈な気持ちや態度は余り持ち合わせていません。これは日本での会社でしか働いたことのない人には分かりづらいことかもしれません。堅苦しい表現を使えば、基本的人権、人間としての権利というもの、本当の意味での人間としてのプライドというのを持っているので、家庭を犠牲にしてまで会社のために働くという発想は皆無です。従って、残業という発想は殆どありません。朝8時から午後5時まで、基本はこの時間内で仕事を終わらせます。勿論、午後7時8時までまれに残業することはたまにはありますが、これらの残業時間は仕事のピークを超えたときに早く帰ることで総時間の調整をしています。従って、残業代というものは存在しません。残業代というのはブルーカラーの方たちの制度です。
  • 従って、時間内に仕事を終らせる為に効率性の追求を誰から言われなくても勝手に皆んなするのです。だって早く帰って、子供に勉強を教えないといけないし、子供をホッケーなどの習い事に連れて行かないといけない、家庭の仕事があるからです。そして自分自身の勉強も必要です。従って、今は殆ど全てがチャット、もしくは電話です。メールを書く時間が勿体ないからです。今でも日本の会社でやってるのかは私は知りませんが、メールの書き方、書式、無駄な報告書、議事録作成など何のお金を産まないものに書ける時間はありません。10年のオイル会社の経験で、議事録なんて書いたことなんて一度もありません。必要ならチャットでフォローアップするだけです。議事録なんて書いてたら、よほど時間を持て余した効率の悪い人と思われ次レイオフされますよ。会議も勿論早く終わらせて次の仕事に向かいます。勿論、残業をし続けるとその人の能力に疑問が付きますので、この意味でも集中して働きます。そもそも、残業している人は、Suckerと呼ばれ、上司に媚びへつらう最低の人間として職場では軽蔑されます。
  • しかし、ではLazyに過ごしているのかといえば、少なくともエリート層と呼ばれる人は全く違います。終身雇用ではないし、過去最高益を会社が記録していてもいつレイオフがあるかもしれないので、自分に競争力をつけようとします。従って、私がいたオイル会社では、エンジニアであればその分野の修士号、博士号、P.Engと呼ばれるエンジニアとしての資格、会計士であればCPA公認会計士)、CFAなど仕事をしながらこれらの学歴のUpgradeや資格取得を継続します。仕事でのパフォーマンスを出すし、これらの資格や学歴Updateも欠かしません。社員同士の競争は凄まじい。日本の会社の皆さんはどうですか?ほとんどの人は何の資格も学歴のUpdateもしてないでしょう。北米の人から日本のサラリーマンを見ると、とてもLazyで競争力があるようには思えません。勉強は大学受験で終わってるでしょ。こんなの北米の一流企業ではありえません。
  • 仕事の効率性についてですが、テクノロジー(コンピューター関連)の採用にはとても積極的です。私がカナダのオイル会社で働き始めた10年前と比べてもテクノロジーの進化は早い。オイル会社は膨大な情報を扱うのですが、この情報処理はエクセルでは限度を超え又は時間がかかるので、SpotfireやPowerBIと呼ばれる分析ツールを使うのが主流になりましたし、私がやっていた長期経営計画作成の仕事では、どのプロジェクトにどれだけの金額をどのタイミングでつぎ込めばキャッシュフロが最大になるかなどを計算するAucerna Planning Spaceというポートフォリオツールがこの3年で主流になりましたし、テクノロジーの進化に伴い全ての分野での分析、意思決定が早くなりました。

株価が上がる、つまり時価総額を本質的に上がるのは生産性の向上のみです。株主価値最大化に向け、つまり時価総額最大化のためにテクノロジーを導入する、人をレイオフする、社員同士が競争する、かといって社員は時間内に仕事を終える、家に帰って家庭での仕事もきちんとこなすし、勿論キャリアアップのための資格取得や学歴の向上も怠りません、これらの事がとても自然のサイクルの中で行われるのが北米の会社なのです。日本のように政府や官僚主導で働き方改革が行われるなどありえません。そもそもこれは冗談にしか北米の会社でやってきた私には思えません。そもそも政府や官僚って一番効率の悪い働き方をする人たちですよね、なんでこの人達が効率性追求や生産性の向上のリーダーシップを取るんですか?そもそも何故そんな当たり前のことを其々の会社が出来ないのか、社員が出来ないのか、センスの悪いジョークにしか聞こえないのが私が思うところです。効率性を追求できない、していない会社や個人はマーケットから即退場なのです。

 

公務員の方々にどうこうしろと言われるのでなく、株主価値最大化のために何をすればよいのかを自分たちで考えれば自然と北米の会社のようになれます。こう言うと、日本は欧米とは違うとか文化が違うとかいう人がいるから面倒なのですが、効率性の追求や生産性の追求に欧米もアジアも、文化も関係ありません。ちなみに、株主価値の最大化というとレイオフされるとかネガティブサイドばかりを見る人がいますが、たしかに私が今経験している通りレイオフというのはとてもつらいものだし、大概の場合理不尽と思えることも多々あります。でも、レイオフの際はしっかりしたSeverance packageがつくんです。私の場合であればきっと日本の一流企業の退職金みたいな金額が出るのです。そしてこれまでの貯蓄とそれを株式市場で回せば、大企業のそこそこの役職の年収くらい年間利回りが出るんです。因みに私は株主を軽視する日本企業の株なんて買いたくないですよ、みなさんだってそうでしょう。だから、北米の経営のやり方、これは文化の違いにするんじゃなくて、単に効率性の追求の先にある最も進んだ経営のやり方なんです。これを理解するのに、認めるのに日本の方はどれだけ時間が必要なのでしょうか?日本式経営?それって単に北米の会社の50年前の仕事の仕方でしょ。

 

私を北米かぶれとしか理解できないのであればしょうがないですが、これは私がリスクを取ってそして自分に資格や学歴、そして実力をつけてカナダオイル会社からオファーを勝ち取り、10年間毎年起こるレイオフの波を乗り越えてきた実際の経験から私が理解していることを皆さんにお伝えしているのです。まあこれをどう理解するかは皆さん次第です。でも、こんなことを書いてるのは、私は日本が好きだからなんですけどね。