カナダ外資系日記

海外就職、海外で働く、株式投資について書きます。

コンサル地獄物語

今回は私のコンサル地獄物語です。まあ過激なタイトルですが、当時は本当に辛かった。

 

あるプロジェクトを通して具体例を。会社買収先選定のプロジェクトです。ドイツの消費財メーカーが日本のメーカーと提携を進めて数年がたったものの、提携が全く進まずしびれを切らしたドイツメーカーが、その日本メーカーを買収したいとの意向を持っており、その日本メーカーが買収ターゲットとしてベストなのを確認したいというプロジェクトでした。ターゲットは子供でも知っている日本の会社です。

 

チーム構成はいつものスリーマンセル。在東京オフィスのドイツ人をマネージャーとして、下に私も含めて2人のコンサルが付きました。まずは、消費財市場は3人とも全く経験がないので、資料会社から消費財市場の資料をいくつか取り寄せ、その他リサーチ、業界の方へのインタビューを行い、日本市場の規模、市場動向、プレイヤーのポジショニングや強み弱み、株主構成などを調べ上げ、最後にクライアントにプレゼンという流れです。

 

私の同僚のコンサルは、入社以来コンサルで、私より年下ながらまあ仕事が早い事早い事、そして深い。コンサルの最終アウトプットは究極的にはパワポ資料です。プロジェクトが終わって最終的に物理的に残るものはパワポなので、このパワポに高額なコンサル費用が支払われるとコンサルファームは考えています。従ってこれに対するコンサルのこだわりはすごいです。今でも、出身国はどこであれ、コンサル出身の人が作ったパワポは一目でわかります。また、このパワポ資料は本当に正直なのです。夜も12時を超えるとチームミーティングが始まります。その日に作ったパワポを見せ合うわけです。パワポを見れば一目瞭然でコンサルの思考の深さ、スピードが現れます。そこで、まあ色々と言われるわけです。

 

「何でそんなに頭がごちゃ混ぜになってるのかな」 私そんなに皆さんほど頭良くないんです。

 

「〇〇だと思う、思うってどういう事?調べが甘いから調査不足という意味での思う?十分に情報は集めたけど頭がまだ整理できてないという分析不足の意味での思う?、自分ではわかっているけど私に気を使って敢えて語尾を濁した思う?コンサルなら言葉を正確に使わないと。あと思うという言葉を使うのは今後一切辞めてくれ」 流石コンサル、突っ込みもMECE(漏れなくダブりなく)だなと思いました。

 

「君が言うブランドってどういう意味?言葉の定義は?定義も言えない言葉をコンサルなら使うべきではないでしょ」  ご尤もでございます。メーカー出身でブランドについて語ってましたが、今ようやく自分が何もわかってない事分かりました。

 

「難しいって言葉やめてくれる?ビジネスは人間の気持ちと違って所詮ビジネスなんだから本質はとっても簡単なの。難しく見えるっていうのはあなたの頭が整理整頓できてないだけなんだよ」  いやはや、貴方はいつもクリアカットで尊敬します。

 

因みに、この突っ込みを入れた人の一人は、私をこのコンサル会社に採用してくれた人で40代前半であの航空会社の副社長になった人です。

 

打ち合わせが終わり、夜中の2時に同僚のオフィスからカタカタとPCをタイプする音におののきました。彼らはどんどんパワポが積みあがってるのに私は一枚のパワポもまともに書けない。当時は、他パートナーやプロマネから、言い訳の余地の全くない上記のような指摘を受け逃げ場の全くなく、どう考えても仕事が出来る年下の同僚や部下からの突き上げに、それ以上にあまりの自分の不甲斐なさに、夜中4時5時に仕事も終わらず今日の見込みも立たず、絶望で涙がこみ上げる日々でした。人間って、悔し涙って本当に出るんだなーと思いました。こんな状況だったので、どんな高級なホテルに泊まってもレストランに行っても高い給料を貰っても、何かを感じる余裕など本当にありませんでした。ただただ来る日も来る日もパワポとの戦いでした。

 

ただ私はラッキーでした。このプロジェクトの同僚のコンサルは私みたいなダメコンサルでもわかるように懇切丁寧に仕事の仕方を教えてくれました。まずはどんな情報も白紙に書いて、それらをどのように整理するか、どうやって整理した情報をロジックのひもで結びつけるか、そしてロジックの紐づけができたら、それらの起こっていることの本質は何なのか、その本質が見えたら更に上位概念として何が言えるのか、この上位概念をクライアントに見せるのがコンサルの仕事だよ ということをこのプロジェクトを通してかなり手取り足取り教えてくれました。5回Whyを掘り下げると必ず本題の品質に行き当たると教えてくれました。捨てる神あれば拾う神ありです。この人のおかげで、何となく先に光が見えるようになったような気がしました。

 

また、コンサルの話を終わってないのにこれを言うのは早いのですが、人間の思考ってすごいなーと。一見知らない業界や会社でも、知っていること、知らないことを認識して、マーケットはどのくらいの規模なのか、どのように需要は変わっていくのか、それにたいしてプレイヤーはどう動いてるのか、では今のプレイヤーがカバーできていないニッチはどこにあるのか、など考えれば色んなことがわかるなーと気づかさせてくれて、ビジネスでも私生活でも、考えることの重要性を教えてもらいました。

 

次はいよいよ、日本を出る理由についてです。