カナダ外資系日記

海外就職、海外で働く、株式投資について書きます。

オイル資産を売りまくれ

今回はオイル資産売却の話です。私が現在のオイル会社に入社した時には原油価格はバーレル当たりUS$100を超えており、オイルを掘れば掘るほどジャバジャバとお金が入って来る時代でした。従って、ボーナスでAudiを買ったとか、ジュニア系の会社でIPOで成功した会社の社員はストックオプションフェラーリを買ったとか、そういう話はカルガリーの町中で溢れ、人口100万人の町でオイル会社だけで数兆円を超える利益を出してました。カフェの店員でもワークビザが発行されたのはこの時代です。

 

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しかし、2014年の年末に原油価格はUS$100から一気にUS$30を切ってしまい、業界が大パニックになりました。そしてクリスマス休暇を挟んで翌年の年初にはどのオイル会社も従業員の3割カットなどレイオフが吹き荒れました。サービス会社であるエンジニアリング会社やドリル会社などは従業員の9割カットという所も多数ありました。

 

このような危機的状況の中、当社の資産ポートフォリオの見直しをすることになりました。原油価格がUS$100時代にはどの資産もキャッシュジャブジャブの状態だったのが、US$30を切ると、不良資産が多数となり売却することになりました。この資産売却、買収のロジックは、大手のオイル会社は基本的にコストが高いのでそれらの資産から利益を出せないのですが、ジュニア系の少人数の会社が運営すれば利益を出せるのです。このような、ジュニア系の会社がマーケットの変化により機敏に行動し、ファンド会社が資金を調達します。この資産流動性の高さは北米の本当に本当に素晴らしい所です。

 

Business Development(BD)チームの私は、この資産売却プロジェクトの実務担当者として動きました。まずは売却候補資産を選び出し、C-Suite(CEO, CFO, COO)の許可を取得し、その資産をオペレートしていたGeologist、エンジニアとプロジェクトチームを作ります。そして、投資銀行を雇い、この資産は今後これだけのポテンシャルを持っており、現在価値で(Net Present Value)で数十億、数百億の可能性があるとというバイヤー向けのプレゼン資料を作ります。そして、資産のテクニカル、ファイナンシャル、環境、リーガル系の書類を纏めるデータルームを作り、バイヤーと交渉、締結となります。2015年から合計2年半ほどこのプロジェクトを担当しましたが、数千億円の売却に成功し、会社もボーナスという形で応えてくれました。流石カナダのオイル会社、そこらへんは分かってます(笑)。

 

資産売却の仕事はその性質上、プロジェクトチームメンバーである方々は資産が売却されると同時にその売却先の会社に移るか、当社に残るか(もうそのポジション無いのですが)、それ以外かというとても微妙なプロジェクトです。また、現場のオペレーションに携わる何百人の人も正にこの立場になります。従って、これらの観点からはとても辛いのですが、一方BDの人間からすると、資産・会社買収はビッドを出して10に1つも当たれば御の字ですが、資産売却プロジェクトはとても高い確率でディールが成功します。従って、BDマンとしては働けば働いた分だけ目に見える成果が見え、会社にも数千億のキャッシュという形で貢献出来、レジュメにもしっかりと書ける、とても遣り甲斐のあるプロジェクトなのです。また、資産を売却するとは、Geologist、Engineer、ファイナンス、Tax、弁護士、IRなど会社の略全ての部門と仕事をするので、社内ネットワークという目に見えない資産も作れます。このオイル会社に入社して胸を張れる成果を出せたプロジェクトでした。