カナダ外資系日記

海外就職、海外で働く、株式投資について書きます。

グローバル人材と英語

Yahoo Japanのニュースを見ていると、グローバル人材、そのためには英語が大事、いやいや英語はローカルの方が上手いから、日本の歴史を勉強したり、仕事自体が大事とか、色んな意見を見ます。ここでは、私がカナダに移住してみてきた世界から私の見解を述べたいと思います。本日からクリスマス休暇なので時間がたんまりあるのですLOL

 

グローバル人材っていっても、これって定義がとても曖昧です。この言葉から大学生の頃の私がイメージしていたのは、明日はロンドン明後日はNY出張といったもので、明確な定義を持っていませんでした。皆さんはどう定義しますか?

 

私はカナダに移住して16年、カナダの会社で働いて10年が経ちます。カナダでの立場が代われば求められる英語力も異なるという当たり前のことに気付きました。逆に言えば、カナダにいれば求められる英語が全ての立場で同じという事はありません。

 

例えば、明日はロンドン明後日はNY出張ということであれば、日本の会社で働いて世界中を出張するというイメージです。もしくは、それの延長線上でどこか海外に駐在するという意味ですね。この場合であれば、実はカナダなどの英語圏での駐在でさえ、求められる英語力というのは実は余り高くありません。それこそ、TOEICで800点もあれば特に問題ないでしょう。というのは、勿論このレベルの英語力では実は複雑な交渉、それどころか日常会話でもスムーズには行きません。でも、これは意外と大事なポイントなのですが、上司や同僚も英語をきちんとわかっていないので会議で相手の言っていることを余り理解できなくてもそれは問題になりません。それよりむしろ、7割程度理解した内容を、如何に議事録として日本語でさも全て理解したように書けるのか、この日本語力の方が大事になります。また、会社だけでなくその地域に住んでいる日本人会とのつながりが強くなりますから、海外に住んでいながら実は日本村に住んでいるということになり、英語を使う機会は実はあまり多くないのです。従って、海外営業をしている人、海外駐在を経験している人たちは、この経験から英語力ではなく仕事力、というようなことを言います。海外に住んでいるようで実は日本人に囲まれての生活だから当然のことなのです。

 

一方、外資系企業の日本オフィスで働くという場合はどうでしょうか。私もドイツ系外資コンサルにいたのでよくわかるのですが、ドイツ人やスイス人がオフィスにいましたが、彼らとたまに話す程度でそれ以外は日本語なので、英語を使う機会はあまりありませんでした。ただ、私は英語が多少喋れたので、日本にある外資系をクライアントに持つという事はありましたが、クライアントも日本人の英語レベルを知っているので、それほどExpectation Levelは高くないので、TOEIC800点レベルでこれまた十分です。

 

では、グローバル人材というのを、海外の会社でその海外本社で働くと定義するとどうでしょうか。求められる英語力は前者2つの例とは全く異なる次元が求められます。これは私が今いる環境ですが、日本人だから英語が下手でもよいということは一切認められないし、それこそ会社にいる間は当然ながら英語だけになります。どれだけ仕事力があっても頭が良くても教養があっても、英語でのコミュニケーションができなければ3日で首になるのは当然です。それどころか、書類審査とインタビューを突破してオファーを貰うところにそもそも到達しません。つまり、働く以前の問題になります。ここでの経験から言えば、仕事と英語ができることは当然となります。両方ですね。ここでは、TOEICで測れる英語力ではありません。TOEFLの方がより適切かもしれません。私は帰国子女でもないし言葉のセンスに欠けていると思っているので、MBAをイギリスでとってもそれでもコミュニケーションには未だに苦労します。数学力、分析力で生き残ってきました。それでも、日本企業で働いている方の英語とは全く違う次元です。

 

このように、グローバル人材というのはその定義の仕方によって求められる英語力は違います。従って、ここを明確にしないまま単にグローバル人材になるのに英語はそれほど重要じゃないとか、海外の企業で働いたことない人がまるで自分の日本企業での経験から言っているのをよく見て、お子さんを持つご両親に間違った情報を送っているのを見るとこれはいけないと思うのです。もしお子さんが日本企業で海外での出張や駐在、もしくは外資系企業の日本法人というのを目指すのであれば確かに英語は日本の現在の英語教育の延長線上で問題ないと思います。しかし、海外企業の海外本社で働くということを考えているのであれば、英語はネイティブ並みを目指すのは当然で、日本の英語教育の延長線上にこれはありません。

 

また、グローバルゆえ日本を知る、歴史を知るのが大事という意見を見ますが、これも同意しかねます。政治や歴史解釈はとてもむずかしい問題ですから、見解の相違により必要のない軋轢を生む可能性が高いのです。特に歴史解釈は海外、例えばカナダと日本では大きく異なります。趣味であれば別ですが、グローバル人材になるために日本の歴史文化を知る、一見もっともらしい意見ですが海外の企業で働いたことない方の想像の世界のように感じてしまいます。それよりも、スポーツが上手いとか、ピアノなど楽器が上手いという方が仲間に入りやすいと思います。またニッチなところでは、日本の漫画好きという人は少数ですが必ずいるもので、こういう人たちと強い絆を作る機会になります。

 

お子さんがどのような将来を目指すのか、それをある程度明確にするのがどのくらい英語を勉強させるのかを決めるのにとても大事だと思います。もし海外企業の本社で働きたいということであれば、日本の学校での英語教育では困難で、やはり特別な教育を受けさせる必要があると思います。