カナダ外資系日記

海外就職、海外で働く、株式投資について書きます。

競争をやめてしまった日本

私の会社はマイニング会社で、銅、亜鉛や原料炭を生産して、世界のお客さんにこれらの商品を出荷しています。原料炭のお客さんは製鉄会社で世界中の製鉄会社に販売してます。日本の製鉄会社にも勿論出荷しています。価格はIndexという価格メカニズムがあり、その時の需給関係に基づきほぼ自動的に決まります。

 

日本の製鉄会社、世界の競合会社に比べても本当にお気の毒なんです。この原料炭に関して言えば世界で有数のマイニング会社は4−5社しかないのでここから購入せざるを得ません。逆に彼らの優良顧客は日本の自動車会社で、顧客に対してはとても弱い立場にあります。つまり、購入先であるサプライヤーと顧客の両方から締め上げられる構図になっています。一方、韓国などは主な自動車会社はHyundai、そして主な製鉄会社はPOSCOという会社しかないので、この二社の力関係は対等です。したがって、POSCOがHyundaiに対して媚びるということはありませんし、原料炭や鉄を作るもう一つの原料である鉄鉱石の値段が上がれば当然鉄の値段も上げます。

 

なぜ日本の製鉄会社がこれができないかといえば、単純に市場規模に比べて日本の鉄鋼会社の数が多すぎるからです。資本主義のメカニズムがきちんと働くのであれば、このように利益が出ない業界は合従連衡が起こります。しかし、日本の場合はアベノミクス以来、日銀が日本の会社の株を買い漁って株価下落を食い止めているので逆に言えば株価が適正価格より高くなり、優れた会社が競合他社を適正価格で買収することができません。業界の合従連衡が起きないというのは、短期的には雇用が減少することは無いので一見良いように見えますが、中長期的には業界自体が低迷してしまいます。正にこれが日本の鉄鋼業界が業界構造を変えられない一つの理由です。

 

問題は日銀だけではありません。これは鉄鋼業界だけではなく、日本の会社は赤字でないと会社を売却したり大きな構造改革をしません。黒字であればまあOK。でもこのブログでも紹介している通り、欧米の会社は黒字は当然として、年間数千億円の利益を出していてもそれでも他社を買収したりレイオフしたりしてより利益追求の手綱を緩めることは決してありません。

 

更に、日本の会社は正社員をパフォーマンスに関わらず首にすることがとても難しく、レイオフではなくせいぜい希望退職、雇用の流動化が進みません。更に雇用を65歳まで伸ばすという市場論理とは全く逆のことをしています。つまり、社員も競争しない、会社も競争しない、競争をやめてしまっています。日本の一流企業でMBA修士、資格取得の勉強をしている人ってどのくらいいますか?ほとんどいないでしょう。皆んな学ぶことは学位レベルで終えて学ぶことをやめてしまっています。

 

日本はこれからますます高齢化が進み社会保障費が増えていきます。そして今に始まったことではありませんが私のいるカナダのように天然資源には恵まれていません。そして、英語もほぼ喋れません、つまり情報が入ってきません。このようなとても厳しい環境下にある人たち会社が競争をやめてしまっては世界で一流と呼ばれ地位を維持することなんてできるはずがありません。日本は先進国って過去の延長で言ったりしても数々の経済指標では先進国ではありません。

 

いやいや先進国じゃなくても衰退する国そして衰退する生活でも受け入れるということであれば別ですが、物質的に豊かな生活を送りたいのであれば、時代遅れの官僚制度、雇用制度、年金制度、標準語を英語への変更、学校教育の見直しなど、これまでと全く違う制度に作り変えないと、この日本の衰退を止めることなんてできないと思います。勿論、会社も会社員も一旦やめてしまった競争を再び始めなければいけません。サババルゲームに戻るのです。ただ、抜本的に変えると言っても、日本には、日本生まれの日本育ちの日本の会社しかしらない人しかいないので、これらの人たちがどんなに考えたって上手くいくはずはありません。北米の人たちから素直に学んだほうが良いと思います。だって単純に北米のほうが圧倒的に進んでるんだから。